「公正証書という言葉は聞くけれど、普通の契約書と何が違うのか」「遺言や離婚時の取り決め、金銭の貸し借りで、公正証書を作った方がよいのか」と迷う方もいらっしゃるかと思います。
公正証書は、公証人が法律上の権限に基づいて作成する公文書です。遺言、離婚に伴う取り決め、金銭の貸し借り、任意後見契約など、大切な意思や合意を明確に残したい場面で活用されます。
内容によっては、支払が滞った場合の強制執行に備えられることもあります。ただし、これは全ての公正証書に共通する効果ではなく、金銭の支払に関する取り決めなどで、法律上の要件を満たす場合に限られます。
この記事では、公正証書の基本的な役割、活用される主な場面、作成の流れ、費用の考え方を分かりやすく解説します。
公正証書とは
公正証書とは、公証人が私人からの嘱託を受け、法律上の権限に基づいて作成する公文書です。売買、金銭消費貸借、離婚に伴う金銭給付、遺言、任意後見契約など、さまざまな契約や法律行為について作成されます。
公正証書は、公証人が職務上作成する公文書です。民事訴訟では、その方式および趣旨から公務員が職務上作成したものと認められる文書は、真正に成立した公文書と推定されます。
ただし、公正証書にしただけで、契約内容が常に有効になる、相手方との紛争が必ずなくなる、又は記載された事実がすべて真実と確定するわけではありません。内容自体の有効性や履行の可否は、契約内容・当事者の状況・法令等により別途判断されます。
参考:法務省|公証制度について/e-Gov法令検索|民事訴訟法 第228条
公正証書で得られる主な効果
| 効果 | 内容と注意点 |
|---|---|
| 公文書として作成される | 公証人が本人確認や意思を確認し、法令に基づく手続で作成します。私文書より証拠上の扱いが問題になりにくい場面がありますが、内容の有効性まで一律に保証されるものではありません。 |
| 一定の場合に強制執行の基礎となる | 金銭等の給付を内容とし、債務者が直ちに強制執行を受ける旨の記載・記録がある公正証書は、執行証書として強制執行の基礎となります。 |
| 原本・電磁的記録が保管される | 2025年10月以降、法務大臣が指定する公証人が作成する公正証書は、原則として電磁的記録で作成する取扱いです。作成方法・保管の仕組みは、公証役場へ確認します。 |
金銭の支払いを公正証書にする場合の注意点
公正証書による強制執行が問題になるのは、主に金銭の支払を約束する場面です。民事執行法は、金銭の一定の額の支払、又は代替物・有価証券の一定数量の給付を目的とする請求について、公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載・記録されているものを「執行証書」としています。
例えば、金銭の貸し借り、分割返済、養育費、慰謝料、財産分与などの金銭支払条項について、要件を満たす執行証書を作成しておくと、支払が滞った場合に、改めて支払を命じる判決を得る手続を経ずに、強制執行の申立てへ進める可能性があります。
ただし、公正証書を作成しただけで、相手方の財産が自動的に差し押さえられるわけではありません。実際に強制執行を行うには、必要な手続を経て、裁判所へ申し立てる必要があります。
重要:公正証書にしただけで、どのような取り決めでも強制執行できるわけではありません。強制執行を予定する場合は、金銭の支払いに関する取り決めであることに加え、執行証書としての要件を満たす必要があります。
参考:e-Gov法令検索|民事執行法 第22条/日本公証人連合会|執行文付与申立て/法務省|養育費と公正証書
公正証書が向く代表的なケース
| 場面 | 公正証書を検討する理由・注意点 |
|---|---|
| 金銭消費貸借・債務弁済 | 返済額、弁済期、分割払いとするかどうか、分割回数・各回の支払額・支払日などを明確にします。遅延損害金や期限の利益喪失事由を定める場合は、その内容も確認します。 |
| 離婚協議 | 養育費、慰謝料、財産分与などの金銭支払条項に加え、子の監護や親子交流(面会交流)に関する事項も、必要に応じて取り決めます。 |
| 公正証書遺言 | 遺言の方式の一つです。公証人と証人の手続を経て作成し、家庭裁判所での検認は不要です。 |
| 任意後見契約 | 任意後見契約は、公正証書によって締結する必要があります。将来の判断能力低下に備えて、支援する人と内容を定めます。 |
| 事業用定期借地権設定契約 | 借地借家法の要件を満たす事業用定期借地権設定契約は、公正証書によらなければなりません。 |
公正証書は、合意内容や意思を明確に残すための手段の一つです。必要となる手続や確認事項は、遺言、離婚、任意後見、土地利用など、内容によって異なります。相続、登記、税務、事業承継などが関わる場合は、公正証書の作成とあわせて必要な手続を整理しましょう。
公正証書遺言との違い・関連する記事
公正証書遺言は、公正証書を用いる遺言の方式です。遺言そのものは金銭支払を目的とする執行証書ではありませんが、方式面の確認、原本・電磁的記録の保管、検認が不要であることなどに特徴があります。
公正証書遺言を検討している方は、次の記事をご覧ください。



作成の流れ
必要書類や本人・代理人の取扱いは、遺言、契約、任意後見契約など、作成する証書によって異なります。一般的には、次の流れで進めます。
誰が、誰に対し、何を、いつまでに行うのかを整理します。金銭支払を強制執行の対象としたい場合は、その意向もこの段階で確認します。
作成したい証書の内容を伝え、本人確認資料、法人資料、不動産資料、戸籍、契約関係資料など、必要な書類を確認します。公証業務に関する相談は無料と案内されています。
当事者の合意内容や提出資料を基に文案を整理し、公証人と内容を調整します。強制執行を予定する場合は、対象となる金銭支払債務と強制執行認諾に関する記載を確認します。
証書の種類に応じて、当事者本人、代理人、証人などの出席者を確認します。遺言など本人の意思確認が特に重要な手続もあります。
2025年10月以降、法務大臣が指定する公証人が作成する公正証書は、原則として電磁的記録で作成する取扱いです。書面又は電子データの交付方法は、作成時に確認します。
予約方法、必要書類、出張・ウェブ会議の利用可否などは、証書の種類や事情により異なります。希望する公証役場へ、作成したい内容と当事者の状況を伝えて事前に確認しましょう。
費用はどのように決まる?
公正証書の手数料は、公証人手数料令により定められています。契約や法律行為に関する証書は、原則として目的価額で計算しますが、時間、枚数、定額など別の計算方法が用いられるものもあります。
例えば、法律行為に関する基本手数料は、目的価額が500万円を超え1,000万円以下の場合は20,000円です。ただし、売買、離婚給付、遺言、任意後見契約などは、目的価額の計算方法や加算・交付手数料が異なります。単純に契約金額だけで判断せず、文案と必要資料を整理した上で公証役場へ確認してください。
公証業務に関する相談は無料と案内されています。公証人手数料のほか、専門家へ文案作成や資料収集を依頼する場合は、その報酬、証明書取得費、出張費等が別途必要になることがあります。
参考:日本公証人連合会|手数料
よくある質問
金銭の支払いを約束した公正証書なら、すぐに差押えできますか?
いいえ。金銭等の給付を内容とし、強制執行認諾に関する記載・記録がある執行証書など、法律上の要件を満たす必要があります。
また、公正証書を作成しただけで、相手方の財産が自動的に差し押さえられるわけではありません。実際に強制執行を行うには、必要な手続を経て、裁判所へ申し立てる必要があります。
離婚協議書は公正証書にした方がよいですか?
養育費、慰謝料、財産分与など、金銭支払に関する合意を明確にしたい場合に有力な選択肢です。もっとも、面会交流や親権などを含め、何をどのように取り決めるかは個別事情によります。金銭支払を強制執行の対象とするかも含めて検討します。
遺言は必ず公正証書にしなければなりませんか?
いいえ。遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの方式があります。財産・家族関係、保管方法、証人の確保、費用などを踏まえて選びます。
公正証書の相談は、どこにすればよいですか?
公正証書の作成を検討している場合は、最寄りの公証役場へ相談できます。予約が必要かどうかは、公証役場ごとに確認してください。
作成を希望する内容を伝え、必要書類や作成までの進め方を事前に確認しましょう。
福岡市・糸島市で公正証書の作成を検討されている方へ
公正証書の作成では、単に公証役場を予約するだけでなく、当事者の合意内容、財産・金銭の特定、必要書類を事前に整理することが重要です。金銭の支払いに関する取り決めがある場合は、支払いが滞ったときの対応も含めて検討します。
都留行政書士事務所では、福岡市・糸島市を中心に、合意内容の整理、文案作成の支援、必要資料の準備、公証役場との調整を支援しています。公正証書にすべきか迷う段階でも、お気軽にご相談ください。

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