相続が発生する際に、生命保険金(死亡保険金 以下生命保険金と記載)についての取り扱いがどうなるのかご心配に感じられる方も多いかと思います。生命保険金は誰が受け取ることができるのか?遺産分割が必要なのか?税金は発生するのか?今回は、被保険者の死亡により相続が発生した場合の生命保険金の取り扱いについてご説明いたします。
相続発生時の生命保険金について解説
生命保険金と相続財産
生命保険金は受取人固有の財産であり、原則相続財産にはなりません
まず最初に気になるのは生命保険金は相続財産になるのか?ということだと思いますが、生命保険金は原則相続財産にはなりません。生命保険金には受取人が指定されており、保険金はその受取人固有の財産になります。従いまして、遺産分割協議の対象にはならず、遺産分割協議書への記載も必要ありません。
ただし、あくまでも原則であり、過去には遺産分割の対象となった判例もございます。
※保険金額が極度に高く相続人間の公平を欠くなどのケース
ですので、生命保険の受取請求(手続き)を行うのは、相続人ではなく受取人になります。受取人は被保険者が亡くなった後、遅滞なく加入している生命保険会社への連絡を行い請求書類などの必要書類を取り寄せ手続きを行います、なお、生命保険金は3年間請求しなければ時効により請求できなくなりますので注意が必要です。
保険法(消滅時効)
第九十五条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続放棄をした相続人が受取人となっていた場合、生命保険金を受け取ることができるのか?
前述の通り、生命保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産となりますので、受取人である相続人が相続放棄を行っていた場合でも生命保険金を受け取ることができます。ただし、後述する相続税の課税対象になり、かつ、非課税限度額制度の適用もないことについて注意が必要です。
生命保険金受取時の税金
では、生命保険金が相続財産とならないとするならば、相続税はどうなるのか?についてですが、その答えは「相続税の対象になるケースもあります」ということになります。ここでは、生命保険金を受け取る際にどのような税が発生するのかについてその概要をご説明いたします。
まず、前提として以下の考え方を押さえておく必要がございます。
- 生命保険の契約形態により発生する税種が異なる
- 民法上の相続と相続税法上の相続は考え方が違う
生命保険金の受取時にどのような税金が発生するかは、契約者(お金を払う人)、被保険者(保険の対象となる人)、受取人の関係によって変わってきます
●生命保険契約パターン別マトリックス
| 被保険者 | 契約者 | 受取人 | 対象税 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 | 被保険者と契約者が同じで、受取人が法定相続人であった場合 |
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 (一時所得) | 契約者と受取人が同じであった場合 |
夫 | 妻 | 息子 | 贈与税 | 契約者、被保険者、受取人がすべて違う場合 |
このように生命保険金受取時に発生する税金は、生命保険の契約形態によって違ってきますので注意が必要です。所得税・贈与税の対象となる場合は、通常の所得税・贈与税額計算により納税すべき税額が決まりますが、相続税となる場合は、一定の非課税限度額が設けられています。
生命保険金が相続税の対象となる場合、一定の非課税限度額が定められています
前述の通り、生命保険金は相続財産ではありませんが、税法上みなし相続財産となり課税対象となります。みなし相続財産とは、相続財産ではないが相続税の課税対象になる財産のことです。生命保険金・死亡退職金などがその代表例です。相続放棄により相続人でなくなった場合でも、受け取った生命保険金には相続税がかかりますのでご注意ください。
非課税限度額は、以下の計算式により算出します。
生命保険金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数
例)夫が亡くなり、法定相続人が、妻(配偶者)と息子2人の場合。生命保険金を2,000万円とした場合。
生命保険金の非課税限度額 = 500万円 × 3人(妻+息子2名) = 1,500万円
課税対象額 = 2,000万円(生命保険金額) – 1,500万円(非課税限度額) = 500万円
この500万円を相続対象金額に参入し相続税額の計算を行います。逆に言うと、このケースですと、生命保険金が1,500万円以下であれば、相続税は発生しないことになります。
なお、この非課税限度額は相続人が保険金を受け取る場合のみに適用されます。相続放棄をした人が受け取った場合は非課税限度額の適用はありませんのでご注意ください。
※法定相続人についてはこちらの記事をご参照ください

非課税限度額を計算する際の法定相続人のカウントにつきましては以下の注意が必要です。
- 相続放棄をした人も人数に含めることができます
- 養子についてはカウントできる人数に制限があります。実子がいる場合は1人まで、いない場合でも2人までしかカウントできません(配偶者の連れ子を養子にした場合や特別養子を除く)
相続と生命保険の関連情報
その他、生命保険と相続というテーマにおいて、有用な情報をいくつかご紹介いたします。
遺言と生命保険金
生命保険金の受取人は、遺言書で変更することが可能です(保険法44条1項)ただし、新旧の受取人間でトラブルが発生する可能性もありますので、生命保険金の受取人を変更したい場合は、あらかじめ相続人等に相談の上、保険会社指定の手続きを行っておく方はよいでしょう。
保険法(遺言による保険金受取人の変更)
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
受取人がいない場合
例えば被保険者より先に受取人が亡くなっていたなど生命保険金の受取人がいなかった場合、受取人の相続人全員が保険金の受取人になります(保険法46条)その場合、原則法定相続割合を前提とした遺産分割の対象にはならず、すべての相続人が等しい割合で保険金を受け取る権利を有します。
保険法(保険金受取人の死亡)
第四十六条 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。
民法(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
リビングニーズ
リビングニーズ特約で、生前に保険金を受け取った場合は、所得税の対象にはならず非課税となります。ただし、給付を受けた保険金を使い切らずに死亡した場合は、その残額が財産となり相続税の対象になります。
相続税の非課税限度額
相続税の税額計算では、相続財産に対して一定の基礎控除が行われます。前述の生命保険金の非課税限度額計算において、相続税に参入が必要な金額が残ったとしても、相続財産の総額がこの相続税の非課税限度額以内であれば相続税は発生しません。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円
例えば、法定相続人が、妻(配偶者)と息子2人の場合。
相続税の基礎控除額=3,000万円+3人(妻+息子2名)×600万円=4,800万円
相続財産総額からこの4,800万円を引き残った金額が課税対象額になります。
※相続財産が4,800万円以内であれば相続税は発生しません。

以上、相続発生時の生命保険金の受取と税についてのご説明でした。相続が発生した場合、被相続人(亡くなられた方)が残された財産には様々なものがございます。相続財産となるものならないもの、相続財産となった場合はどのように継承すればいいのかなど、相続は人生でそう何度も経験するわけではありませんので、ご不明なことも多いかと思います。そのような時は、ぜひ行政書士にご相談ください。
当事務所では、二級ファイナンシャル・プランイング技能士の資格をもつ行政書士が、お客様の円滑な相続をご支援いたします。
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