相続が始まると、「死亡保険金は誰が受け取るのか」「遺産分割協議に入れるのか」「相続放棄をしても受け取れるのか」といった疑問が生じます。生命保険金は、遺産分割と税金で扱いが異なるため、最初に契約内容を正確に確認することが大切です。
死亡保険金の受取人が指定されている場合、保険金は原則として受取人の固有の財産として扱われ、遺産分割協議の対象にはなりません。一方、被保険者・保険料の負担者・受取人の関係によっては、相続税だけでなく所得税又は贈与税が問題になります。
この記事では、死亡保険金の基本的な扱い、相続放棄との関係、税金の種類と相続税の非課税枠、確認の進め方を整理します。契約内容や保険料の実際の負担者によって結論が変わるため、相続税の個別判断・申告は税理士へご相談ください。
この記事の要点
- まず、保険証券等で「被保険者・保険料の負担者・受取人」を確認します。
- 受取人が指定されている死亡保険金は、原則として遺産分割協議の対象ではありません。
- 相続税の非課税枠は、相続人が受け取る場合に限られます。相続放棄をした人には適用されません。
まず確認したい3者|被保険者・保険料の負担者・受取人
死亡保険金を確認するときは、保険契約者の名義だけで判断せず、実際に誰が保険料を負担していたかも確認します。税金の種類は、主に次の3者の関係で決まります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 被保険者 | 死亡保険金の支払原因となる、保険の対象者です。 |
| 保険料の負担者 | 実際に保険料を負担していた人です。契約者名義と異なる場合があります。 |
| 保険金受取人 | 保険会社から死亡保険金を受け取る人です。受取人指定や変更の有無を確認します。 |
保険証券、契約内容のお知らせ、保険会社のマイページ等で、受取人・契約者・被保険者を確認しましょう。保険料の負担者が分かりにくい場合は、口座の引落し履歴や確定申告書控えなども確認材料になります。
死亡保険金は遺産分割の対象ですか?
死亡保険金の受取人が特定の人として指定されている場合、保険金請求権は原則としてその受取人に帰属します。そのため、通常は遺産分割協議で「誰が取得するか」を決める財産には入りません。
ただし、受取人の指定内容、保険約款、受取人が先に亡くなっている場合などにより、手続や権利関係が変わることがあります。また、保険金額が相続人間の公平に大きな影響を与える場合には、遺産分割との関係が問題になることがあります。相続人間で意見が分かれる場合は、遺産分割協議書に無理に記載せず、弁護士へ相談しましょう。
遺産分割の基本的な進め方は、遺産分割協議の記事で解説しています。

相続放棄をしても死亡保険金は受け取れますか?
相続放棄をした人でも、保険契約上の受取人として指定されていれば、原則として死亡保険金を受け取ることができます。受取人固有の権利として受け取る保険金は、通常、相続放棄によって取得できなくなる遺産とは区別されるためです。
ただし、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税では相続等により取得したものとみなされる場合があります。相続放棄をした人が受け取る保険金にも相続税が課税されることがありますが、後述する生命保険金の非課税枠は使えません。
死亡保険金にかかる税金|相続税・所得税・贈与税
死亡保険金の税金は、保険料の負担者(契約者)を基準に判断します。被保険者、契約者、受取人の関係により、次のように整理されます。
| 被保険者 | 契約者 | 受取人 | 対象税 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 | 被保険者と契約者が同じで、受取人が法定相続人であった場合 |
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 (一時所得) | 契約者と受取人が同じであった場合 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 | 契約者、被保険者、受取人がすべて違う場合 |
一時金で受け取る死亡保険金が所得税の対象となる場合は、原則として一時所得として扱われます。年金形式で受け取る場合などは取扱いが異なるため、受取方法もあわせて確認します。
相続税の非課税枠|500万円×法定相続人の数
被相続人が保険料を負担していた死亡保険金で、相続人が受け取るものには、次の非課税限度額があります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、非課税限度額は1,500万円です。相続人全員が受け取った保険金の合計額がこの金額を超える場合、各人が受け取った保険金額に応じて非課税枠を配分し、超える部分が相続税の課税対象となります。
注意したいのは、保険金が非課税限度額以内でも、相続税が必ずゼロになるわけではないことです。非課税となるのは保険金の一定額であり、預貯金・不動産などを含む遺産全体から相続税を計算します。
相続放棄をした人と非課税枠
法定相続人の数を数える際には、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数えます。一方、非課税枠を実際に利用できるのは相続人に限られ、相続放棄をした人や相続人以外の受取人には適用されません。
養子がいる場合は、法定相続人の数に含められる人数に制限があります。相続税全体の基礎控除や法定相続人の数え方は、相続税の基礎控除と主な控除・特例の記事で解説しています。

受取手続の進め方
保険会社名、証券番号、被保険者、保険料の負担者、受取人、受取方法を確認します。
被保険者の死亡を伝え、請求書類と必要書類を確認します。
保険金の受取人、遺産分割の対象となる財産、相続放棄の予定、相続税申告の要否を分けて整理します。
保険給付を請求する権利は、原則として行使できる時から3年間行使しないと時効により消滅します。相続税の申告期限も別途確認が必要です。
よくある質問
保険金受取人は、遺言で変更できますか?
保険金受取人は遺言によって変更することができます。ただし、保険契約者が遺言により保険金受取人を変更した場合、遺言が効力を生じた後に、保険契約者の相続人が変更の事実を保険会社へ通知しなければ、その変更を保険会社に対抗できません。
生前に受取人を変更する場合は、保険契約者が保険会社へ意思表示して行います。死亡保険契約では、被保険者の同意も必要です。必要書類や届出方法は保険会社ごとに確認しましょう。
受取人が被保険者より先に亡くなっていた場合はどうなりますか?
保険事故の発生前に受取人が死亡している場合、原則として、その受取人の相続人全員が保険金受取人となります。ただし、保険契約の内容や別段の意思表示によって扱いが異なる可能性があるため、保険会社へ確認してください。
死亡保険金を受け取ると、必ず相続税の申告が必要ですか?
いいえ。保険金だけでなく、預貯金・不動産・債務・控除・特例などを含めて、相続税の申告が必要かを判定します。
まとめ|受取人と保険料の負担者を最初に確認する
死亡保険金では、誰が受取人か、誰が保険料を負担していたかによって、遺産分割との関係や税金の種類が変わります。保険証券等を確認し、保険会社への請求、遺産分割、相続税申告を混同せずに進めることが大切です。
都留行政書士事務所の相続サポート
戸籍収集、法定相続情報一覧図の申出、財産資料の整理、遺産分割協議書の作成など、相続手続全体の整理を支援します。相続税の個別の評価・申告は税理士、不動産の相続登記は司法書士又は弁護士、相続人間に争いがある場合は弁護士への相談をお願いします。

- 参考情報

夫
妻
子
