自筆証書遺言は、遺言者自身が作成する遺言書です。公証人や証人を必要とせずに作成できる一方、民法で定められた方式に従わなければ、遺言書が無効となるおそれがあります。
この記事では、自筆証書遺言を作成する際に押さえるべき要件、財産目録の作り方、よくある失敗、保管方法、検認について解説します。
※遺言の有効性は、作成時の判断能力、個別の記載内容、財産・相続関係などを踏まえて判断されます。この記事は一般的な制度の説明です。

自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が原則として自ら書いて作成する遺言です。証人を必要とせず、自宅などで作成できるため、比較的始めやすい方法といえます。
| 作成者 | 遺言者本人 |
|---|---|
| 証人 | 不要 |
| 本文の作成 | 原則として遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印する |
| 財産目録 | パソコン作成や登記事項証明書・通帳のコピー等の添付が可能 |
| 保管方法 | 自宅等で保管する方法のほか、法務局の遺言書保管制度を利用できる |
| 検認 | 自宅等で保管したものは原則必要。法務局で保管されたものは不要 |
遺言の3つの方式全体を比較したい方は、先に遺言の方式とは?自筆・公正・秘密証書遺言の違いと選び方をご覧ください。

自筆証書遺言で必ず押さえる4つの要件
自筆証書遺言の基本的な要件は、民法968条に定められています。
- 遺言書の全文を遺言者本人が自書すること
- 作成日付を特定できる形で自書すること
- 遺言者の氏名を自書すること
- 押印すること
本文をパソコンで作成したり、他人に代筆してもらったりする方法は、自筆証書遺言の本文としては利用できません。日付も「令和○年○月吉日」のように日を特定できない記載では不十分です。
押印について、法務局の保管制度の案内では認印でも差し支えないとされていますが、スタンプ印は避けるよう案内されています。保管制度を利用しない場合も、押印の有無や遺言者本人の作成であることが後で問題にならないよう、作成・保管の方法を慎重に検討してください。
財産目録はパソコンやコピーを使えます
自筆証書遺言では、財産目録に限り、自書する必要はありません。パソコンで作成した目録のほか、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピー等を財産目録として添付できます。
ただし、自書によらない財産目録には、その目録の毎葉に遺言者が署名・押印する必要があります。自書によらない記載が両面にある場合は、両面への署名・押印が必要です。
財産を特定できない記載は、相続手続の支障や争いにつながります。不動産は登記事項証明書で所在地・地番・家屋番号等を、預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号等を確認しながら記載します。
遺言書には何を書くのか
遺言書に記載する内容は、財産の承継方法だけではありません。一般的には次の事項を整理します。
| 項目 | 記載・確認のポイント |
|---|---|
| 遺言をする旨 | 文書が遺言であることを明確にします。 |
| 財産の特定 | 不動産、預貯金、有価証券等を特定できるように記載します。 |
| 承継する人 | 相続人・受遺者を取り違えないよう、氏名や続柄等を確認します。必要に応じて、住所・生年月日等も記載します。 |
| 遺言者の住所 | 法定の必須事項ではありませんが、遺言者を特定しやすくするため、必要に応じて記載します。 |
| 遺言執行者 | 必要に応じて、遺言内容を実現する人を指定します。 |
| 付言事項 | 家族への思いや遺言を作成した理由を記載できます。ただし、原則として財産承継そのものを決める法的効力はありません。 |
自筆証書遺言を作成するために、戸籍謄本・登記事項証明書・通帳の写しを必ず添付する必要はありません。ただし、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーは、財産目録として添付することができます。相続人や財産を誤りなく特定するため、作成前に戸籍、登記事項証明書、通帳等を確認することが大切です。
作成前から保管までの流れ
不動産、預貯金、有価証券、事業用財産などを確認します。
誰が相続人となるか、誰に何を引き継ぎたいかを整理します。
不動産を誰が取得するか、預貯金をどう分けるか、遺言執行者を指定するか等を検討します。
本文、日付、氏名を自書して押印します。財産目録を別紙にする場合は、毎葉の署名・押印を忘れないようにします。
自宅等で保管するか、法務局の遺言書保管制度を利用するかを選びます。
自筆証書遺言でよくある失敗
- 本文をパソコンで作成している
- 日付が「吉日」などで特定できない
- 財産目録の各頁に署名・押印がない
- 不動産や預貯金を特定できない
- 訂正方法が民法の方式に従っていない
- 保管場所を家族に伝えず、死後に発見されない
自筆証書遺言の加除・訂正には、民法968条3項の方式があります。書き直しや訂正が多い場合は、加筆を重ねず、内容を整理して新たに作成する方法も検討します。
民法968条3項 ⾃筆証書(⽬録を含む。)中の加除その他の変更は、遺⾔者が、その場所を指⽰
し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さな
ければ、その効⼒を⽣じない
自宅保管と法務局保管制度の違い
| 保管方法 | 主な特徴 | 検認 |
|---|---|---|
| 自宅等で保管 | 保管場所を自由に選べますが、紛失、改ざん、発見されないリスクがあります。 | 原則として必要 |
| 法務局の遺言書保管制度 | 法務局が原本・画像データを保管し、方式面について外形的な確認を受けられます。 | 不要 |
法務局の保管制度は、紛失や改ざん、死後に発見されないリスクを抑える有力な選択肢です。ただし、法務局が遺言内容の妥当性や有効性を個別に判断・保証する制度ではありません。財産の特定や遺言内容そのものは、作成時に慎重に確認する必要があります。
保管申請は遺言者本人が行う必要があり、代理人による申請や郵送による申請はできません。手数料、予約、必要書類、通知制度については、次の記事で詳しく解説しています。

検認とは
自宅等で保管していた自筆証書遺言を発見した相続人等は、原則として、遺言者の死亡後に家庭裁判所へ検認を申し立てます。封印のある遺言書は、家庭裁判所で開封する必要があります。
検認は、遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません。遺言書の形状、日付、署名、訂正の状態などを明確にし、偽造・変造を防ぐための手続です。
法務局で保管された自筆証書遺言に関する遺言書情報証明書は、検認を必要としません。
遺留分・生命保険は別途確認が必要です
遺言で財産の承継先を指定しても、遺留分が問題となる場合があります。また、死亡保険金は、契約内容や受取人の指定、保険料負担者によって、相続・税務上の扱いが異なります。
これらは自筆証書遺言の方式とは別の論点です。財産の内容やご家族の状況に応じて、遺言作成前に確認してください。生命保険金については、相続:生命保険金と相続についてご説明もご覧ください。

福岡市・糸島市で自筆証書遺言を検討されている方へ
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、形式の不備、財産の特定不足、保管方法によって、相続開始後に手続が止まることがあります。
都留行政書士事務所では、福岡市・糸島市を中心に、財産・相続関係の整理、遺言内容の検討、文案作成支援、法務局保管制度の利用に向けた準備を支援しています。自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶべきか迷われている方も、お気軽にご相談ください。

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